2008チャレンジ研修成果(2/2) |
◯「全国の図書館を『知的ツアー基地』としてネットワーク化しよう」
*一人の受講者の地元図書館の利用の不満からの発想でした。
発表の段階では、余所の図書館や通勤通学途中の駅などでも本を借りたり返したりできれば便利だ、という<機能論>に閉じていました。<感覚論>は付けたし的であり<意味論>は希薄でした(受講者の相互評価もそのような採点結果を示しました)。
そこで講師講評の段階で、新しい<意味論><感覚論>に裏打ちされた新型ライフスタイルを創出するアイデアでないとパラダイム転換の革新物語にならないことを指摘し、他の受講者を含めたブレストを展開しました。結果、全国を旅する「知的ツアー」者という新しいカスタマー像を見出し、彼らが潜在的に求めていて歓迎するだろう、新しい図書館利用の<意味論><感覚論><機能論>に再編しました。
こうしたブラッシュアップ方向は、発案者の<機能論>的な現状不満を解消するものでもありましたが、それ以上に従来の図書館なら利用しなかったような、新しいカスタマーを創出する<意味論><感覚論>となったことにみな納得しました。
◯「下校児童の見守りを支援するお年寄りの生活習慣づくり」
*これは受講者の一人が、最近の話題となっている地域社会による「下校児童の見守り」に、普通のお年寄りが一役買うことができないか、と発想したものです。
親御さんが児童の下校に抱く心配と、ごく普通のお年寄りが地域社会と触れ合いできれば役立ちたいという期待とを我が思いとする情緒から出発しています。
共有する<感覚論>を背景に、下校児童の安全確保というニーズと、近隣お年寄りの生活習慣というシーズをマッチングさせようとの<機能論>があり、その意味するところである、住民の相互扶助、老若の分担協力といった<意味論>も明快でした。
このような場合、魅力的かつ目から鱗が落ちるように「なるほど、そんな手があったか!」と共鳴してもらうパラダイム転換物語とするためには、既存の<不快の情動>を理想的な<快の情動>に転換する具体的なアイデアの明示が必要になります。つまり、抽象論として大賛成な「目的」に対して、それを達成する「手段」を具体論として「目に浮かぶ」ように提示し、理解を超えて「私もやってみたい(やってもらいたい)」「私ならこうやりたい(やってもらいたい)」と動機づけられることで、パラダイム転換物語が完結するのです。
受講者による発表時点では、具体的なソリューションの明示が不足していて、ここまでには至っていませんでした。講師講評時点でそこをご指摘し具体性を求めてブレストを展開しました。
下校児童のリスクが最大化するのは、児童が一人になってからの、人通りが少ない通りの、死角になるあるいは死角のあるスポットであり、そこにどう対応するかが話し合われました。
そんなスポットに見守るべき児童が下校する際、近隣のお年寄りに必ずアプローチしてもらえるようにするにはどうしたらいいか、ランダムにアイデア出しをしました。
結果、お年寄りそれぞれの仕事や趣味などの日課として、生活習慣として日々立ち寄る工夫をスポットに施せばいい、となりました。
そして、下町の路地で掃除したり植木の手入れをしてきたお年寄りは、じつはそういう児童の見守りをするでもなくしてきたことに思い当たりました。このパラダイムを、居住環境と犯罪傾向が大きく変わった今、どのように現代的に再生するかが課題だと気づきました。
現代の一般的なセキュリティ・ソリューションは、防犯カメラや非常ブザーなどメカ頼りだったり、かなり負担の大きな活動をするボランティアに依存しています。一方、受講者の発想は、「ごく普通のお年寄りの生活習慣が、そのまま地域の下校児童の見守りになる」という所がポイントです。あくまでもそれがメインで、サブとしてメカ支援を添えるという形でブラッシュアップさせて戴くことになりました。これは何かの時にお年寄りが犯罪に巻き込まれることを避けるためです。
◯「『◯◯市の明日の急患受け入れ予報』をお伝えします。」
*これは受講者の一人が、最近問題になっている急患の病院受け入れ拒否という嘆かわしい事態について真摯に取り組んだ成果です。
発表段階では「万全な医療体制」を救急時だけでなく予防から通院までの全体で捉え、データ放送による総合的な情報提供を考えていました。
講師講評段階で、万全な医療体制を求めることは当然のことですでに関係各方面のさまざまな努力が行われている。それは既存パラダイムであると指摘してブレストを展開しました。
すると、受講者の「リスクの予測」へのこだわりと、「隣接市町村の自分の専門科目の急患受け入れリスクが高いという予測を知れば、非番の時でも有志の医師なら備えるのではないか」という考えに触れて、「急患受け入れ予報」というコンセプトに至りました。
「急患受け入れ予報」をみて、妊婦や病気あるいは虚弱な子供をもつ親は、万一に備えて隣接市町村へのアプローチなどを配慮する。子供を伴った旅行先でも、万一に備えます。
病院は、隣接市町村の病院と協調して補い合う。
医者は、科目別のリスクの高低で私生活を配慮する、といった新習慣が生まれます。