「ハードな都市からソフトな都市へ、そしてソフトな都会づくりへ」という予測を思い起こして |
バブル前夜の当時、都市再開発が盛んで、私もディスプレイ企業にいる時には西武百貨店の新規出店がらみで、事務所設立以後はゼネコンや広告代理店や組織建築事務所の依頼で構想やコンセプトづくりをしていた。
論文は、そんな私が、広告業界誌からの「森ビルによって竣工された六本木アークヒルズについてどのように捉えればいいか論説してほしい」という依頼に応えたものだ。
ご興味ご関心のある方は、こちらからpdfファイルをダウンロードしてほしい。
http://www2.gol.com/users/cds/city.pdf
前記事でもすでに触れたように、
「六本木アークヒルズ」http://ja.wikipedia.org/wiki/アークヒルズでは、一般的な「建設=建物づくり」と同様に、利用する人々の使い勝手を想定し、<モノの機能>を起点とした<モノのデザイン>をしている。この点でも「経験をデザインする」と言えなくもないが、森ビルはさらに明快に「物語づくり」という意味合いで<コトの意味>を起点とした<コトのデザイン>をしている、と私は解説した。「物語づくり」という特異な概念は普及していなかったが、同じ内容を「ソフトな都会づくり」と表現した。
当時は、新都庁舎も建設していて世間では新宿副都心も注目されていた。しかし私は、森ビルが3A地区(青山、赤坂、麻布)で推進する「物語づくり」の方が将来的には大きな有効性を、世間の話題としても、よって不動産投資としても発揮する筈だと予想した。
そして実際に、その後の「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」の展開をみると、森ビルは「固有かつ優位の物語づくり」ばかりを選択して開発を集中した。それは、上海の巨大インテリジェントビルにまで及ぶのだから、その徹底ぶりは、東京駅前の「新丸ビル」の三菱地所、「東京ミッドタウン」の三井不動産など業界他社を寄せつけない。
以上のように20年前すでにある業界では、「経験をデザインする」ことが、小難しいデザイン戦略論やケーススタディなどなしに直観的かつ戦略的に行われ、さらに昨今アメリカ渡来の新広報戦略とされる「固有かつ優位の物語づくり」の潮流が生まれていた
のである。