販売促進とは 人が商品を買うベースとなる自我状態の強化 |
交流分析(Transactional Analysis、以下TA)は、フロイトの難解ないわば文語体の精神分析を分かりやすい口語体に直しアメリカで発達したものです。この本はそれをもっとも正確に解説する本です。
TAの特徴は、交流=人間関係に分析の焦点を当てていることと、専門医に頼らずとも個人やチームで自己判断できることで、日本でも入社試験の適性検査や女性雑誌の性格診断などに活用されています。
TAは、私たちの本音を「現実的な自我」の状態として分析するものです。
基盤となる考えは、私たちの現実的な自我には、以下に上げる2人の「子供」、1人の「大人」、2人の「親」の計5つの状態があるということです。
□子供の自我状態 CHILD=C
人が幼い頃にしたのと同じように、いま行動したり、感じたりするときに、自我は子供の状態にいるという。主として感情や衝動から成り立っている自我状態。
◆「自由な子供」 人格の中で最も生来的な部分。泣きたいとき
FC(FreeChild) に泣き、笑いたいときに笑うなど自然な感情
を素直に表現したり、子供っぽい行動をする
部分。
◆「順応する子供」 親の顔色をみて順応した子供、イイコの部分。
AC(AdaptedChild) 自分の本当の気持ちを抑えて、親や上司の
期待にそおうとする部分。
□大人の自我状態 ADULT= A
物事を自分で冷静に判断して行動する、いわばコンピュータのような働きをする自我状態。
◆「大人」 物事を自分で合理的に判断して行動する、計画
A(Adult) したり分析したりする部分。
□親の自我状態 PARENT=P
自分を育ててくれた親たちの考えや感じ方を取り入れた自我状態。
◆「批判的な父親」 批判的な親の部分。自分の価値観や考え方が
CP(Critical Parent) 正しいものとして譲ろうとしない部分。
◆「保護的な母親」 保護的な親の部分。親切、思いやり、寛容の
NP(Nurturing Parent) 部分、励ましたり褒めてあげる部分。
さて、TAがくれる重要な発想のヒントは、
私たちが何らかの判断をして行動を決定する際、5つの自我状態の内「一つが優勢を占め、ついにあなたの心の主導権を握って、さまざまな行動にかりたてる」ということです。
つまり、人が商品を買ったりサービスを利用するという判断をする際、最終的にはある自我状態がベースになっている。
ならば、販売促進とは、購買行動の促進である以上、「商品やサービスを受け入れるベースとなる自我状態を、早期に喚起しその行動に踏み切るほどに強化すること」以外の何ものでもない、
商品やサービスの種類によってどの自我状態がベースとなるかは、誰もがもっている経験知で分かります。そして、お店で自我状態に影響をおよぼす心理的な効果のある商品やサービス以外の要素は、商品解説や接客、空間やAVなどの店舗環境です。
そこで、私は、以下のような商品やサービス別の購買行動の促進策の分類をして参りました。
皆さんも、これを是非参考になさって、ご自身のお店や商品サービスの販売促進策の方向づけや絞り込みにお役立てください。
◆「自由な子供」をベースとする購買行動
EX.
ファッション衣料や小物雑貨を衝動買いしたり、商品を買うこと自体を我を忘れて楽しむ。
お祭りで夜店を立ち食いして歩き回る。銀座のクラブやホストクラブで遊び倒す。
↓購買行動促進策
FCは、胎内感覚や迷路感覚そして目眩感などによって促進される心ワクワクの状態によって強化される。
EX.
エントランスフロアの吹き抜け空間に大型ヴィジョンでエンターテイメント性の高い映像(ex.NYバージンメガストア)。パティオ広場で楽しいイベント(ex.地域密着型モール)、市場的なタイムセール(競りイベントが目玉の生鮮市場、回転寿しのマグロ捌きショー)。
○接客スタッフ=子供を遊ばせる母親、一緒に遊ぶ子供
◆「順応する子供」をベースとする購買行動
EX.
流行のブランドや中元歳暮品を世間の目を気にして選ぶ。
気取って入った高級レストランでマナーに従って食べる。
↓購買行動促進策
ACは、流行や世間体に追随する新し物好きやいいかっこしいが、その場の演技を楽しみ、人に見られて評価されることにより強化される。
EX.
権威あるブランドを背景にした厳格なデザイン秩序の店舗(ex.高級ブランドショップ、高級チョコレートや高級和菓子の直営店)。
○接客スタッフ=権威者の代理人、同志の先輩
◆「大人」をベースとする購買行動
EX.
最寄り品をスーパーやコンビニで経済性や利便性を考えて買う。
冷凍食品や長距離移動のチケットやパック旅行を計画して買う。
健康食品や金融商品や保険などを分析して買う。
↓購買行動促進策
Aは、経済性や利便性を合理的に判断するのに適した機能的で無機質的な空間によって強化される。
EX.
ハイテクな情報サロンに情報検索システム(ex. eコマースサイト、CITIBANK)。
○接客スタッフ=シミュレーションの解説者、支援者
◆「批判的な父親」をベースとする購買行動
EX.
自分のこだわる銘柄の商品や店舗のサービスを、ドグマ化した基準を絶対視して買う。
必ずしも高級ブランド、一流老舗、人気流行の商品や店舗とは限らず、本人なりの継続性を特徴とする。
幼い頃から食べ慣れた好物。家や郷里の習慣や誇りに結びついた商品や店舗。
↓購買行動促進策
CPは、自分のドグマ化したこだわりに対してお墨付きを与えてくれる権威や専門的知識によって強化される。(他の銘柄にお墨付きを与える専門的知識は無視することから、必ずしも合理的な綜合判断とは言えない。)
EX.
独特な伝統や権威を感じさせる様式性ないしはオーラのある空間に、逸品性や職人や庶民の気質が感じられるサービスや接客(ex.行きつけの蕎麦屋やお好み焼き屋、丁重なご挨拶の際の贈答品としてきめている和菓子、こだわりの酒や肴)。
○接客スタッフ=伝統の生き証人、伝承者
◆「保護的な母親」をベースとする購買行動
EX.
パーソナルギフトやベビー洋品を真心をもって選ぶ。
バースデーケーキや子供用食料品を、買い与える相手の気持ちを想像して選ぶ。
↓購買行動促進策
NPは、真心を伝えたい相手の喜びや幸せをイメージさせる心やさしい空間とハイタッチな触れ合いによって強化される。
EX.
幼児やペットのファンタジーな世界をかわいく演出する子供衣料店やペットショップに、親や飼い主の心がなごむような子供やペットの遊び場。
○接客スタッフ=母親や飼い主の代理人、保母さん
(高級ブランドショップに、女性客に彼氏やパパが連れてこられおねだりされている場合は、スタッフは、女性客の買ってもらった際の喜びを彼氏やパパにイメージさせる。つまり、女性客単独の場合は「順応する子供」対応だが、連れてこられた男性客には「保護する母親」となって彼らの自我状態と同化することが肝要。)