それは違うだろう、と思ったこと。 |
優位大手のソニーやシャープの累積赤字が話題になって、劣位大手の人がうちは早く撤退しリストラして良かったみたいなことを言うのを聞いて、それは違うだろう、と思った。
①元はと言えば入社試験でふるいにかけて採用した正社員、それを5千人、1万人と首切りするのは経営の失敗。たまたま不採算部門に配属されて頑張っていたリストラ対象の社員はたまったもんではない。彼らに何ら過失はないのだ。
②大手メーカーのブランド価値があるというなら、就業者が食べて行けるその冠中小企業子会社を社員が半分投資するなど自主性によって多く立ち上げ投資回収できれば、そこの就労者となった社員の人件費負担は無くなる。また子会社と本体のシナジーも生じる。つまり首切りをしなくて済ましその分、成長分野を模索する多角化に挑戦もできるが、そういう事業立ち上げは稀少な例外に留まった。
ハード/システム〜ソフト/コンテンツ〜サービス/ソリューションの三位一体化が会社全体ではなかなかできない劣位大手の場合、その挑戦をこうした新設子会社とその異業種異業界との提携に託すという考え方もあろうに。
③そもそも5万人以上の優位大手と3万人以下の劣位大手では規模からして違う。1万人首切りしたら後者では3分の2とか半分になり実質異なる組織に。資本規模も違う。そもそも、前者が基幹事業でするしかない巨大な設備投資をともなう大ばくちを、してはいけない後者が真似てしたのが間違いだった。
④この間違いをどこもかしこもしたのは、バブル期までの成功体験を崩壊後も引きずったからだった。バブル期、株式1部2部の上場会社とその関連会社の正社員が全企業社員の6割に達し、一億総中流意識が蔓延。劣位大手の経営者も自らを優位大手と同じと捉えてしまった。
⑤しかし長引く不況の経験を先にした欧州の劣位規模のメーカーでは、たとえばポルシェのようにハイエンドに特化した製品化とマーケティングを展開したところが生き延び。日本でも長引く不況を乗り越えた事業部門としては、たとえばオリンパスの内視鏡のように、特殊な業務用のシェア確保の製品化とマーケティングを展開。
こうした劣位規模のメーカーならではの戦略を軽視して、優位規模と同じ戦術を念頭にフルレンジの一般向け製品のグローバル化だけを漫然としたところが経営を悪化させている。仮にハイエンドと普及品を扱うにしても会社=ブランドを分けて製品化とマーケティングを別建てにするという発想がない。
⑥今、産業改革機構主導によるジャパンディスプレイ(a)と、鴻海と提携してストップ高となったシャープ(b)が話題だ。
こうした優位大手の話に、またぞろ劣位大手が右へ倣え的な反応をしてしまうことが危惧される。
(a)は価格競争ではなく性能やメンテ信用が優先される官需(軍需を含む)への供給が下支え的に約束されている。劣位大手の特殊業務用の食指が伸びても良さそうだが、良心が問われる利権談合世界に仲間入りすることを覚悟しなければならない。
(b)は、オーディオ業界では経験済みだが、資本劣位の場合、外国資本に飲み込まれることになる。
⑦こんな現代だからこそ、経営者には◯そもそも会社とは何なのか?、社員には◯そもそも自分や同僚の仲間はなんで会社に入ったのか?何を仕事の張り合いとしてきたのか?から考えてほしい。