カテゴリ:■洞察論・発想論からの発想 |
「岡目八目」というグレートアマチュアリズムの効用がある。細部が見えない門外漢の方が、どんなに複雑な問題でも単純な骨組みだけをみることができる。専門家は、細かい数字を挙げたりデータを集めたり分析したり、できるだけ誤差の少ない解答を求めようとするが、それは予め解答の枠組みを前提しているということだ。
「調味料の穴」の逸話は、ものごとは大胆かつ素朴に考えた方が明快な答えが出ること、いいアイデアはいつでも人の心をつかむ明快さがあることを示している。
●「パラダイム」と「スキーマ」と「メタファー」 参考:「組織認識論」加護野忠男著
組織の目に見えない特性が組織の情報処理(決める・選ぶ・解く)と知識創造(見る、知る、分かる)に影響を及ぼす。これが組織文化であり組織に属する人によって内面化される。神話、英雄、儀式が組織文化の共有と内面化にとって重要な役割を演じることが分かっていて、そのメカニズムは、認識と感情の結びつきに求められるが、いまだは明快ではなく、脳科学による解明を待つ。
分かっていることは、「人々は情報に反応するのではなく、情報から引き出された意味に対して反応する」その際「意味の決定は、受け取られたフロー情報(エピソード記憶)と記憶の中に蓄積されたストック情報(意味記憶)との選択的な連結の過程である」。この「蓄積された体制化された情報」「情報を結び付け関連づける情報」がスキーマである。言語によって表現できないスキーマが「イメージ(心像)」である。
これらが既存パラダイムを意識的無意識的に規定している。
スキーマは、外界から得る情報に対して意味を与えるのを助けると同時に、情報の選択的な連結の手段である。このことは脳科学で言う「志向性」(メタ認知やメタ思考を助ける)に関係する。
またスキーマはそれに合わない情報に対して注意を向けさせる。但し何に注意がいくかは、文脈依存型の東洋人と文脈自立型の西洋人では異なる。
そしてスキーマは、僅かな情報から状況判断する推量(アブダクション)や問題解決を助ける一方で、誤った原因帰属である逆機能を固定化する。
逆機能については、悪い事態の原因は、組織の外部にある、組織の内部にあるなら自分以外にあるとしやすいことや、一時的なものであって継続的ではないとしやすいこと、さらには自分も原因の一部であってしかも原因解消の見込みが立たないとなるとそもそも問題自体が存在しないか、問題が存在することは不可避であると決めつけやすいことが指摘されている。
適応的で創造的な企業は、能動的な行動志向性を持っている。これは、十分なる暗黙知を得るには身体的な行為をともなった場への関与が不可欠なことを示している。暗黙知は、スキーマによる形式知化を免れて、無意識的な認知を意識化する。
「ある事柄を言うために、それに類似した別の事柄を引き合いに出す知の方法」にメタファーがある。比喩あるいはアナロジーと呼びかえてもよい。「狭義のパラダイム」とはこのレベルのメタファーのことである。
メタファーには、分析区分として、
1=表面的な言語レベル
2=意味論ならびに統語論のレベル
3=認知のレベル
があり、これらが入れ子構造になっている。
「広義のパラダイム」とは包括的な3=認知のレベルのメタファーのことである。
「社会のメンバーがもつ、日常的な出来事やメンバー自身の組織的な企図をめぐる知識の体系的な研究」で「会話分析」を重視するエソノメソドロジーでは、パラダイムの概念を通じて2つのことを主張している。
1つは、組織をめぐる現実は客観的に存在するのではなく、組織内の相互作用によって社会的に作り出されるということである。
第2は、パラダイムが組織内の人々の行為を調整し制御するための、換言すれば人々を支配操作するための重要な手段になることである。
ここで、組織を「送り手と受け手の関係性」と置き換えることができる。
メタファーには、内容区分として、
思考前提となる基本メタファーと、新しい意味を伝える手段である伝達メタファーがある。
つまりメタファーとは、既知のものから未知のものへと向かう知の方法である。
メタファーには、作用区分として、
内面的には新しい洞察や仮説を生み出す働きと、外面的には個々の人間と文化とを媒介する働きをする。
前者の働きは、対置される言葉の非類似性を強調することで新しい潜在的な意味を暗示するメタファーによる。これを「ダイファー」という(ex.体験させない職場体験)。
後者の働きは、そのメタファーに直面するまで人々が気づかなかった洞察あるいはぼんやりとしか気づかなかった洞察を表現するメタファーによる。これを「エピファー」という(ex.観察だけさせる職場体験)。エピファーにおいては類似性が重要な役割を演じる(ex.職場キーマンに影のように着いてまわる)。
メタファーが人々に受け入れられるプロセスは、ダイファーがエピファーになり、それが日常の語彙化するという順序をたどる(ex.「シャドーイング」)。
組織ないし「送り手と受け手の関係性」の日常の理論は、2つのアンカーをもっている。
1つは、より抽象的、普遍的なアンカーであり、基本メタファーとしてのパラダイムがその役割を果たす。
他方は、より具体的、個別的なアンカーであり、具体例がその役割を果たす。
現代マーケティング理論においては、<万人向けコンシューマー狙いのマス・マーケティング>が前者、<質的に特定の対象に向けたカスタマー狙いのワン・トゥ・ワン・マーケティング>が後者に相当する。
後者の仮説を求めるブレストは、洞察発想の与件となる日常の理論についての会話において、ダイファー→エピファー→日常の語彙化をシミュレーションする作業と言える。
