パイオニアが、11月5日発表の中間決算において、2010年3月期の業績見通し(当期純損失830億円)を上方修正した。新興国市場を中心に、車載機器の販売が上振れしたため、とのこと。
公的資金の誘致話は、なんとパイオニア側から棚上げとなった!
パイオニア経営陣は400億円規模の資金調達(内訳は、増資300億円、借り入れ100億円を想定)が必要と明言してきたが、今回の上方修正によって、「金融機関へ新規融資は求めず、資本増強の規模も200億円を下回る」(ファンド関係者)。
年内までに、パイオニア経営陣は、ホンダ(約25億円の第3者割当増資予定)やファンドによる資本増強策をまとめる、という。
要は400億円必要だったのが、200億円で良くなった訳だが、「構造改革費用の節減と新興市場での車載機器売り上げの上振れで200億円」という数字は、どうもピンとこない。
「100億円の利益マイナス予想が、100億円の利益プラスが確実になり、資金調達が200億円浮いた」ということなのか。
その場合、構造改革費用の節減が数億から数十億、利益の上振れが数十億、両方足して100億ということになる。
これが最期とリストラは徹底して行われた訳で、リストラコストが当初想定より数十億浮いたとは想像しにくい。浮いて十数億ではないか。
さらに、新興市場での自動車販売の好調のお陰とはいえ、最低数十億の利益上振れを見込めるほどの売上拡大というのも凄い話だ。新興市場では高級車ばかりが売れる訳ではないから、比較的に単価の低い利益を圧縮させられているOEM商品だ、かなりの売上数の上振れでなければならない。
そして、本田分25億円を除いた必要資金、175億円以下の民間ファンドがすでに約束されているニュアンスの社長の公言。
先月10月には、「中国政府系の投資ファンドが、パイオニアの買収を模索。国内の大手証券出身者を中心とした人脈も巻き込んで独自に資産査定を進め、機会をうかがっている」という報道があった。
証券関係者は「カーナビに使う3次元画像処理の特許技術が軍事転用できる」と指摘していて、経産省は公的資金投入の名目を得られるが、民主党が消極的であるとの憶測も流れた。
私は、軍事転用よりも日本各社のカーナビ特許のクロスライセンスを狙って、中国政府系の投資ファンドが触手を延ばし、これを経産省が嫌ったと推察する。
ただ、民主党が公的資金の投入に消極的なのと、ひょっとすると新政権の親中姿勢から中国政府系の投資ファンドの動きを(軍事転用ではないとして)容認したとすればそのことから、経産省としては表立って何もできない。
そこでひょっとするとだが、経産省が水面下で主導してクロスライセンス絡みの業界各社とそのメインバンクで民間ファンドを形成したのかも知れない。(軍事転用は意図的に流されたガセネタの可能性もある。)
以上が175億円以下を手当する民間ファンドの憶測話だ。
そして、急に浮上した200億円の必要資金軽減の話も、万一何か絡繰りがあるとすれば、それも水面下の指導なり支援なりによるのかも知れない。
いずれにせよ民間ファンドなり中国政府系投資ファンドなりで、当座の延命は確実になって良かった。
ただここで、これまで社長の厚い信任を受けていた産業再生機構の大物OBのコンサルタント氏の関与が全く無かった、とは考えにくい。
要はいま、「中間決算して蓋をあけたら公的資金が要らなくなってた、さらに年末までに民間ファンドで175億をまとめられそうだ」という話になっているが、この時節にそんなうまい急展開があるとはにわかに信じがたい。すべては新興市場の活況化のお陰なのか。
コンサルタント氏が、新政権が公的資金投入という形式を踏みにくい状況を踏まえて、経産省が水面下で主導してできる代替策を推進したのではないか。
コンサルタント氏は動かした資金の%のマージンを報酬とするのだから、それが公的資金であろうとファンドであろうと構わない。
そうでも考えないと、コンサルタント氏を雇ってきた意味、コンサルタント氏が頑張ってきた意味がないことになってしまう。
さて来年度、仮に今年度と同じ新興市場の車載機器売り上げを想定したとして、今年度と同じ売り上げと利益の上振れをしたとしよう。
するとその部分に限って言えば、パイオニアは数十億円の利益増となることになる。
ということは、新興市場の成長基調を着実に捉えて売り上げ拡大傾向となり、パイオニアは借金を着実に清算していくことになる。
そうであれば「延命」ではなく、まさに「起死回生」だ。
新興市場の成長はそれほどに力強く、それをパイオニアは着実に捉えたということだ。
こうした推移が確かなことだとすると、私には、もう1ヶ月早く分かっていれば辞めなかったのではないかと思う人たちの顔が浮かぶ。
構造改革コストはもっと節減できた筈だ。
ここ1ヶ月の事態の急変、そこに何か絡繰りが有ったのか、あるいは絡繰りなどまったく無くて単に新興市場の活況という神風が吹き始めただけなのか、それは来年度の新興市場の売上と利益の推移で確認できる。
いずれにせよ、国内外の経済情勢からみても、今は国内市場向けの大博打を打たないで、新興市場向けのマーケティングをさらに強化していかねばならないことは明らかだ。
新興市場の手応えが確実であれば、パイオニアはそういうマーケティング方針をとる筈である。
補記
「新興市場での車載機器売り上げの上振れで」必要資金が軽減したとは、単純に予想より上回った分の売上金を資本増強に回せる、ということかとも考えた。その分に関しては、投資回収を済ませていて売上イコールほぼ利益と看做すことができるのかと考えた。
その場合、構造改革費用の節減が数億から十数億、売上の上振れが百数十億、両方足して200億。民間ファンド、本田分と会わせて400億で必要な資本増強額を満たすことになる。
この場合、何の絡繰りもない売上増である。
今年度資本増強に回した売上の上振れ分が、新興市場の活況化が確実で来年度も期待できるとすれば、クルマ以外の事業部門が足を引っ張ることがなければかなり安定した「延命」となる。
車載機器部門は、新興市場に特化したOEMを充実しながら家電店売りの後付け市場の強化政策もとる筈だ。
ただ私には、ここ1ヶ月の急展開が、新興市場での売上上振れと、200億近い民間ファンドの確証とセットで浮上している、ということがひっかかる。
すべて新興市場の活況化のお陰だとしても、あまりにタイムギャップが無さ過ぎるのだ。
たまたま、国内向けヒットの確証がある新型商品の開発が先行していて、それをネタに民間ファンドの形成があったという経緯も想像してみたが、この時期の救済色の強いファンド話にはそぐわない。
本記事では、11月5日の中間決算発表の後、公開情報をもとに考えあぐねたそのままを述べた。