*「コンセプト思考術」を活用する前段の実務の立ち上げ方の例解 |
まず、「全天球カメラ」とはこういうものです。
動画をご覧下さい。
このような画期的な製品をメーカーが開発すると、
社員の誰もに、ああこんな使い勝手もあるだろう、こういう使い方も面白いぞと受け手側の生活者が楽しめるコト発想がどんどん浮かんでくる。
じつは、こういう時ほど、大枠の事業化戦略づくりがおろそかになるのである。
このような場合、「コンセプト思考術」を活用する前段の実務の立ち上げ方ということが重要になってくる。
「コンセプト思考術」は、<送り手側のモノ提供の論理>から<受け手側のコト実現の論理>へのパラダイム転換発想を促すものだが、画期的な開発製品をとにかく世に打ち上げたいという気持ちが先行し、受け手側のコト発想をしているようでいて<送り手側のモノ提供の論理>の枠内に留まっていたりする。一見、矛盾してるようだが、経済環境や会社の財務状況など送り手側の事業主体の諸条件を勘案して冷静に市場創造を考えることが大切になる。それは矛盾ではなく、受け手にとってもっとも理想的な最終ゴールに着実に到達するシナリオがなければ、結局は<受け手側のコト実現の論理>ではないということなのである。
じつはここに大きな分れ道があって「はじめの一歩」で誤ってしまうと、後いくら頑張ってもうまく行かなかったり、軌道修正しようとしても戻れないことが多い。
今回のリコーの「全天球カメラ」の事業化戦略例解では、結論を先に述べると
◯デバイスの大量生産大量販売が前提になる一般向け用で事業化を直接するのではなく、
国内で多様多彩な業務用ニーズへの深掘り対応から着手する。
一般向け用は「小型化」や「動画化」など開発投資が巨大で広告費もかかり、
一回打って期待を下回ると立ち直れないような大ばくちを打つことになるケースを私は多くのメーカーで何度も見てきた。
その点、業務用は想定業務に必要で有効であればコストに利益を乗せた価格で買ってもらえる。
また、開発段階から想定業界のリーディング企業と共同開発をすることが着実な販促にもなる。
さらに、一般向けのように大きな一発勝負ではなく、多様多彩な業界の業務向けの攻めを同時多発しシナジーをもって並行していける。すべてのビジネスユニットを異業種異業界のパートナーとの共同開発することで開発コストとリスクを低減できる。
◯全天球カメラで撮影した映像は、スマートホン上で指の動きにあわせて球体などいろいろに加工しつつ見れる。
カメラをもって使った人よりも、アップされたその映像を見る世界中の人々の総計の方が多いという事態にもっていける。
ということは、スマートホンのアプリをベーシックな利益源泉とすべきである。
つまり、全天球カメラは買わないが、それを業務使用する業者に撮影してもらったり、レンタルしたりして撮影してクラウドにストックした映像を、世界中の誰もがスマートホン上で楽しむ、そういう状況が世界中に広がることを中継点としての目標にする。
以上の事業化戦略の路線は、
全天球カメラというデバイスを一般向けに「小型化」して量産拡販することに直接的に全力投球する路線とは両立しない。
現実的にはメーカーは一度、後者の路線をとると、その路線から外れることは一切しないという「選択と集中」にあたかも遮眼帯をしたように突っ走ることになるからだ。
一方、前者の業務向け路線は現行完成品でも可能な業務向けから始めて行くが、それと並行して「小型化」や「動画化」の開発も進めて、全天球カメラでの撮影や撮影映像の鑑賞が普及し、スマートホン用アプリが世界中に拡散した段階で、デバイスを一般向け拡販する。後者の路線はしっかりした土台から飛翔させることができる。そこで最終ゴールだ。
どちらがリスク小さくビッグなビジネスモデルを志向しているか、冷静に考えてほしい。
こうした冷静な判断が求められる最初で最後が今でしょ、ということなのです。
(参照:「なぜもっと業務用のカーナビを攻めないできたのだろうか。」
http://cds190.exblog.jp/20763593/)